「あとがき」片岡義男著
1970年代から現在まで40年以上にわたって数多くの作品を書き続けてきた著者。作品はもちろん、実はその「あとがき」にも面白いものが多い。本書は、1974年刊行の「ぼくはプレスリーが大好き」から2018年刊行の「珈琲が呼ぶ」までの単行本と文庫に書かれたあとがき150編を刊行順に収録した異色の「あとがき」集。本書を読むと、音楽、写真、映画、本、旅、日本語と英語など、著者が一貫して関心を持ってきたテーマが浮かび上がる。
特に面白いのは、創作の舞台裏が詳細に明かされているところだろう。
例えば、雑誌「野性時代」創刊号に書いた短編小説「白い波の荒野へ」がきっかけになって生まれた「波乗りの島」の創作秘話がある。
80年の角川版、93年のブロンズ新社版、98年に改訂された双葉文庫版、そして2007年にスイッチ・パブリッシングから刊行された「青年の完璧な幸福」のあとがきにも秘話が書かれているが、読み進めると小説の舞台がなぜ日本の日常とかけ離れた設定になったのかが見えてくる。時間がたつにつれて、著者が自作を再発見する過程が興味深い。
(晶文社 2700円+税)