「泥酔文学読本」 七北数人著
極度に義理堅かった坂口安吾は、すべての仕事をこなすためにヒロポンの錠剤を飲んで睡眠を削った。ところが、仕事を終えて眠ろうと思っても眠れない。今度は眠るために酒を飲む。安く早く酔うために、安吾は危険なカストリ焼酎などを飲んだ。ただし、東京新聞の記者と飲むときだけで、彼らは連日これらの酒を飲んでいるから、彼らが死なないうちは大丈夫だ。だが、安吾は若い頃はヘタレな酒飲みで、処女作「木枯の酒倉から」を書いた頃はまだほとんど酒が飲めず、仲間たちとふかし芋を頬張っていた。(「坂口安吾の酒」)
他に、金が入れば鯨飲馬食して使い果たしたあげく餓死したダダイスト・辻潤など、酒と文学を語るエッセー集。
(春陽堂書店 2400円+税)