趣向を凝らす坂東玉三郎 異質ワンマンショーで見せた気骨
最後の第4部だけが異質だ。玉三郎ひとりしか出ない、ワンマンショーという点でも異質だが、今月の出演俳優の中で玉三郎のみが、異常事態の中での特別な興行なのだとの認識で臨む。特別なことをして客を楽しませようと、さまざまな趣向を凝らすのだ。
前半が「口上」で、以前の歌舞伎座を模した背景の前に金びょうぶを置く。次に、背景が「舞台から見た客席」となって、普段、玉三郎が歌舞伎座で見ている「景色」を観客に見せるという趣向。単なる「口上」ではなかった。
続いて、せりが下がって、奈落に降りる。同時に舞台には巨大スクリーンが置かれ、奈落に降りた玉三郎を映し出す。ここから玉三郎による歌舞伎座奈落ガイドが始まる。玉三郎の実況中継が、面白い。
ガイドが終わって、「鷺娘」。しかし、全編を舞うのではなく、過去の映像を映し、最後の5分くらいのみを舞台で舞う。ところが、終わりよければ全てよしではないが、それだけでも満足感があるから不思議なものだ。
何があっても揺るがない歌舞伎と、臨機応変に対応していく歌舞伎――できれば、両方を。