混合診療の自己負担率は75%
2013年度に先進医療を受けた人が支払った総医療費は約133億円。この分は全額患者負担です。
先進医療は混合診療なので、これに健康保険でカバーされる金額(約71億円)が加わります。患者が支払ったのは、この3割の約21億円。まとめると、先進医療とそれに付随する保険医療の総額は約204億円。そのうち患者負担は約154億円。実に約75%が患者の自腹だったわけです。
これは政府にとって大きな誘惑です。先進医療を増やしていけば、必然的に患者負担が増え、その分だけ保険医療財政が助かるのですから。
実際、国民が先進医療にかける金額はずっと右肩上がりです。65億円(09年…先進医療分のみ)、78億円(10年)、98億円(11年)、100億円(12年)、133億円(13年)といった具合です。助かるものなら大枚をはたいても構わない、という患者心理が数字に表れています。
高価な治療を保険医療に組み込むと、財政負担が増えてしまいます。先進医療にとどめておく限り、どんなに高額でも患者は金を工面しようとします。保険会社も先進医療特約を売って儲けることができます。だから陽子線治療などは、いつまで経っても保険医療に移行されないのです。
政府は先進医療を拡大させることで、少しずつ混合診療の範囲を広げようともくろんでいるのです。医療格差の時代は、もうすぐそこまで来ています。
▽長浜バイオ大学・永田宏教授(医療情報学)