歌えなくなったら…木山裕策さんの運命変えた後悔と挑戦
歌手48歳<甲状腺乳頭がん>
この病気になるまで大病の経験もなく、毎年、健康診断ではオールA。自覚症状はなにもありませんでした。健康なはずの私は、いきなり「がん」と言われて、急に頭がおかしくなってしまったんです(笑い)。でも、頭がおかしくならなかったら、36歳という年齢で、妻と子供の4人がいて、歌手になろうなんて考えないですよね(笑い)。
当時、私はネット関連の広告の仕事をする純粋なサラリーマンでした。課長になったばかりで、多忙ながらも妻子に恵まれ楽しい毎日を過ごしていました。そんな2004年の2月、毎年受ける人間ドックで「喉にしこりがある」と言われ、大学病院で検査を受けたのです。そして3月、医師から「甲状腺乳頭がん」という病名を告げられました。「がん」と聞いただけで、目の前が真っ暗になりました。
■「声が出なくなるかもしれない」の言葉に……
甲状腺は、喉仏の下にある蝶のような形をした小さな臓器で、全身の新陳代謝を促進する甲状腺ホルモンを分泌しています。私の場合は、左葉に2~3センチの腫瘍が見つかりました。
医師からは「でも、甲状腺がんは進行がゆっくりですし、この大きさなら取ってしまえば大丈夫」と言われ、自分でもインターネットで調べて生命に関わることはほとんどないと知り、少しホッとしました。でも、手術の前日になってさらなる衝撃が走りました。手術の承諾書にサインをする際、「かすれ声になるリスクがあり、最悪は声が出なくなることもあります」と言われたのです。思わずサインをためらいました。