一生に一度 悪性リンパ腫の新治療法“ジョーカー”って何?
■ジョーカーは“切り札”ではない
それにしてもなぜこの治療法が、“ジョーカー”と呼ばれるのか。
「この治療法は一生に一度しか使えないからです。一度使うと体内に抗体が出来て、薬剤を再投与すると異物として免疫組織から攻撃され、アナフィラキシーショックを起こす可能性があるのです。そのため、このジョーカーをいつ切るか、が問題になります。最後まで切り札として取っておいたばかりに、効果的な投与タイミングを失うケースもあります」
実は、このことがこの治療法が普及しない一因になっているという。
「ゼヴァリンは2008年1月に承認されたにもかかわらず、必ずしも患者さんに知られていません。理由は併用する薬剤費を含めて総額500万円と高額なこと(ただし公的保険が利き、高額療養費制度も使えるため、実質的な負担は多くても数万円程度)、治療対象となる濾胞性リンパ腫の進行が遅いため、治療を焦る必要がないこともあります。しかし、日本では再発後、他の治療法を施した後でしか使えないために、使うタイミングを逸し、十分な効果を得られていないことも、ゼヴァリンの評価が上がらない理由のひとつなのです」
大坂部長は再発後、なるべく早い時期に投与することで成果を挙げているという。
「ジョーカーは強い手札ですが、切り札ではありません。早めに使うことです」