これからの心臓血管外科は「足の血管」の治療を無視できない
心臓血管外科の医師として、いま注目しているのは心臓血管の「血管」のほう、とりわけ「足の血管」の治療です。糖尿病などが原因で動脈硬化が進み、足の血管が詰まってしまうと、「慢性閉塞性動脈硬化症」(ASO)や「末梢動脈疾患」(PAD)といった疾患が起こります。血流が悪くなって足先まで酸素や栄養を十分に送れなくなるため、痛みで歩行困難になったり、重篤化すると壊疽を起こして下肢を切断しなければならないケースもあります。
歩けなくなってしまうことは、物を食べられなくなるのと同じくらいQOL(生活の質)が低下するといってもいいでしょう。これからさらに高齢化が進み、足にトラブルを抱えた患者さんが増えるのも間違いありません。そのため、最近は足の血管の治療に対するさまざまなアプローチが考えられています。足の痛みが軽減されて歩けるようになるだけで、患者さんのQOLは大幅にアップしますから、循環器に携わる医師としては、これから避けて通れない分野の治療だと考えています。
内科ではカテーテルでステント(網目状になった金属製の筒)を留置して血管を広げる治療が行われていますが、動脈硬化が進んでいるとカテーテルが通らないケースもあります。