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永田宏長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

孤独<7>血液検査でうつ病を診断しようという試みが各国で

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 この解析では、質量分析装置と呼ばれる最新機器などを使って、できるだけ多くの代謝物の濃度を測定します。いまのところ100ないし200種類の代謝物の測定が可能になってきています。

 2016年に日本の研究チームが発表した論文(PLOS ONE、2016年)によれば、5種類の成分(3―ヒドロキシ酪酸、トリメチルグリシン、クエン酸、クレアチニン、γ―アミノ酪酸)の変動が、うつ病と強く相関していることが示されました。もちろん「この成分が上がったから(下がったから)」というような単純な話ではありません。複雑な統計処理を行った結果、これらの成分の変動パターンとうつ病の強さが相関していた、ということです。因果関係まではまだ分かっていません。

 ちなみに3―ヒドロキシ酪酸(3HB)は「ケトン体」と呼ばれる物質の代表格。低炭水化物ダイエットに詳しい人ならご存じのはずです。体内の脂質代謝によって作られ、とくに血糖値が下がってくると、ブドウ糖の代わりにエネルギー源として燃やされます。ところが最近、3HBが抗うつ作用を持つことが明らかになり、にわかに脚光を浴びているのです。医学の世界では、うつ病は脳の炎症の一種と考えられています。そして3HBには、その炎症を抑える作用があるらしいのです。うつ病の治療法として糖質制限を勧める医師が増えているのもうなずけます。

 メタボローム解析でうつ病の診断ができるようになれば、もう一歩進めて、孤独感やその強さの客観的な診断も可能になるかもしれません。そうなれば、孤独を医学的に治療する道も開けてくるはずです。

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