<7>「環境」か「宿命」か 世界的学術雑誌が真っ向対立
がんは遺伝子が壊れる病気といわれる。そのキッカケとなるのは大気汚染や化学製品、お酒やたばこ、運動不足や過食などの生活習慣を含めた環境要因なのか。
それとも細胞分裂に伴う遺伝子のコピーミスや細胞呼吸による酸化など内因的原因で発生する必然なのか。
その割合について世界中で論争が続いている。
「がんの60%以上はDNAのコピーエラーで起きるのであって、どうあがいても回避できない」
こう主張しているのはジョンズ・ホプキンス大学キンメルがんセンターのクリスチャン准教授とベルト教授で、「サイエンス」に発表した。これまでは親から子に受け継がれる遺伝と農薬や大気汚染などの環境要因が原因とされたが、もうひとつ別の要因があって、その方がメインだという。
一方、「ネイチャー」は「がんの70%は環境要因であり、細胞分裂に伴う遺伝子のコピーミスは30%以下」と正反対の主張を掲載している。
もし、がんの60%以上が内因的要因による不運な出来事の連続で起こるのなら、それほど発がん物質などに神経質になる必要はないようにも思える。元東京大学医学部長(病理学)で現同大名誉教授の石川隆俊氏が言う。