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佐々木常雄東京都立駒込病院名誉院長

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

「標準治療」には患者の意志が尊重されているのだろうか

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■「助かる道はそれしかない」と挑戦した

 自分の若い頃の思い出を振り返ります。正月を控え、「今年は落ち着いていて、担当している入院患者に重症者はいない。年末年始の当直に当たっているのは1日だけだし、平穏な正月を迎えられるかな?」と内心思っていても、急に他の病院から重症患者を依頼され、結局、普段、日曜日がないのと同じように、正月でも毎日毎日出勤することになるのでした。

 ある年のクリスマスイブ、服飾店に勤めるAさん(28歳・女性)が某病院から紹介されて来ました。全身痛、高度な貧血、止まらない歯肉出血と鼻出血、両下肢に多数の細かい出血斑があり、急性白血病の疑いでした。

 血小板数は1万しかなく、すぐに骨髄穿刺をすると、がん細胞の塊がたくさん見られました。「骨髄がん症」(骨髄にがんが転移している状態)で、胃内視鏡では胃がんが見つかりました。低分化型胃がんが全身の骨髄に転移し、出血が止まらない「播種性血管内凝固症候群」(DIC)という状態でした。

 このような場合、ほとんどの病院では終末期と判断し、輸血は行ったとしても緩和的な治療だけで諦めるのが常識だったと思います。血小板数が1万しかないのに抗がん剤治療をするのは冒険、挑戦でした。

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