誤った情報を信じてせっかくの人生を無駄にしないで欲しい
これだけがんの治療薬が発達し、たとえ薬だけでは治癒しなくとも治療によって生活の質は向上し、生存期間が何倍にも延びている時代なのに……Rさんは誤った情報を信じた犠牲者だ。いまのRさんの状態はとても悪い。これ以上、Rさんに担当医のことを問うのは気の毒に思いました。
■最も効く治療法を選択できたはず
この10年、大腸がんに対する抗がん剤治療と分子標的薬は目覚ましい効果を認め、大腸がんのステージ4、肝転移や肺転移があっても、生存期間の中央値は30カ月以上、手術とうまく組み合わせれば治癒した患者さんもいらっしゃいます。
都立駒込病院ホームページの大腸外科の紹介では、「大腸がんは肝転移があっても根治し得る可能性のある疾患です。切除不能の肝転移でも、分子標的治療薬と全身化学療法の併用により縮小化を図り、改めて切除することによって良好な成績を上げています」と記載されています。
Rさんの衰弱した厳しい状態と、採血の検査データでは肝機能、腎機能が悪く、もう抗がん剤治療が無理なのは明らかでした。本来なら、大腸がんの組織のラス遺伝子などの結果から、最も効く治療法を選択できたはずなのに……。そうすればいまは元気でいられただろうに。いまの医学の進歩の恩恵を受けられないことを誠に残念に思いました。