無精子症のAI病理診断 男性不妊症治療の普及につながるか
「無精子症には精巣で精子は作られるものの、その通り道が何らかの原因で閉塞しているものを閉塞性(OA)と呼び、全体の20%を占めます。通り道に問題はないが精子がほぼ作られていないものが非閉塞性(NOA)で、こちらは全体の80%といわれています」
治療は局所あるいは全身麻酔による精巣内精子採取術(TESE)を行う。OA患者は陰嚢を皮膚切開して精巣の白膜を切り開き、その組織の一部を採取する。一方、NOA患者は精巣の白膜を大きく開いて手術用顕微鏡で精巣内をくまなく探索して精子を採取する。前者は日帰り手術、後者は入院手術が一般的だが、小林准教授が所属する東邦大学医療センター大森病院リプロダクションセンターではどちらも日帰り手術で行っている。
「問題は、こうして苦労して採取した精巣内の組織を診断する病理医が不足していて、診断までに1カ月以上かかることです。なかには病理医がいない地域もあり、男性不妊症治療の普及の大きな障壁になっています」
病理医は採取した組織片を観察し「Johnsen score」と呼ばれる精巣内での精子への分化を数値化する指標を用いて、精巣内の状態を把握する。