不妊治療を続けても難しい場合の選択肢 卵子提供の実情と課題
不妊治療と他の医療との大きな違いは、患者夫婦のことだけでなく、これから生まれてくる子供のことも考えて治療しなければならないという点です。「自分がどのようにして生まれ、自分の遺伝的ルーツはどこにあるのか」を知る権利、これを「出自を知る権利」と呼びます。現在の精子・卵子(配偶子)の提供は、提供者は匿名であることが大前提であり、そうなると提供配偶子で生まれたお子さんは、「遺伝上の親が誰であるか」を知るすべはありません。
これから日本でも提供配偶子による生殖医療はますます増えていくと予測されます。その中で提供を望むご夫婦も、われわれ医療者も「生まれてくる子供の福祉」を十分に考えて、治療を進めて行く必要があるのです。