ニーチェを「神を否定する哲学者」に変えた病魔とは?
「梅毒」に罹患していたと疑われる歴史的な有名人といえば、哲学者のニーチェを外すわけにはいかないでしょう。
フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェはドイツの詩人であり哲学者です。裕福な牧師の家に生まれ、24歳でバーゼル大学の古典文献学の教授となりますが、34歳まで勤務したのち体調不良で辞職。その後、在野の哲学者として活躍しますが、44歳のときに精神に異常を来たし、55歳で亡くなります。
ニーチェが評価されているのは、その著書「ツァラトゥストラはかく語りき」で「神は死んだ」と書き、キリスト教を徹底的に批判したことにあります。隣人愛や神のしもべとなること、地上よりも天国、自分の意志よりも神の意志を大切だと説くキリスト教の教えは「弱者の怨恨(ルサンチマン)」に過ぎず、一人では生きていけない弱者が、一人でも生きていける強者に嫉妬して、「他人を愛せ」と押し付けただけだと説くのです。そして何物にも縛られず、軽やかに歌い踊り、この地上での生の喜びを感じながら、自分の意志を大事にすることを優先すべきだと主張します。世間の常識や価値観から開放され、何事にも縛られない「超人」を愛すべきと言うのです。