“在宅”通して毎日誰かと会い見守られる生活を送れるように
「在宅医療」を始められる患者さんというと、どういう方をイメージするでしょうか? 病院から余命を宣告され、残された時間を家族と過ごすため、退院して自宅に戻る──。そういう方が、真っ先に浮かぶのでは? しかし、在宅医療は決して、自宅で最期の時間を過ごしたいと願う患者さんや、みとりたいと願うご家族のためだけの医療ではないのです。
実際、ひとり暮らしで闘病しており、しかしADL(日常生活動作)が低下し通院できなくなった。でも入院するほどではない--といった状況の中で、地域包括支援センターの斡旋で在宅医療を選択する方も、少なからずいます。
超高齢化社会を迎えようとするこれからの時代では、むしろそんな患者さんが増えていくでしょう。その場合、ADLはどの程度なのか? 通院は困難か?在宅医療の導入が本当に適切なのか? 総合的な判断が求められるケースが今後は増えていくと予想されます。
その患者さんは76歳の元トラック運転手さん。脳梗塞、高血圧症、痛風、慢性心不全、腰痛症、変形性膝関節症、認知症など複数の病気を患っていました。病気の影響で歩くのが不自由。また、火の不始末や転倒を起こすこと複数回。時には救急車で運ばれるようなこともあり、ADLが確保できているとは言い難い状態だったのですが、入院せず、ひとり暮らしを続けていました。しかし、通院が困難となり、在宅医療のスタートとなったのです。