バイオリニスト古澤巖さんは10年前に緑内障が発覚「音楽家でよかった」と
古澤巖さん(バイオリニスト/62歳)=緑内障
10年ほど前に受けた人間ドックの視野検査で「視野が狭くなっていますね」と指摘されて以来、ずっと1日1回、寝る前に点眼薬をさしています。そもそも人間的に視野が狭いのに、これ以上狭くなったら困るなと思ってね(笑)。
いわゆる「緑内障」という病気です。眼圧が上がることによって目と脳をつなぐ視神経が障害されて徐々に視野が狭くなる目の病。5年に1度ぐらい受けている人間ドックで見つかりました。自覚症状は何もありませんでした。でも、「放置するとそのうち失明するかもしれない」と医師に言われました。
失明という言葉はショッキングでしたけれど、反射的にちょっとだけ思ったのは「音楽家でよかったな」ということです。音楽家の世界では盲目でも活躍している人が周りにたくさんいるので、もしも目が見えなくなってもバイオリンは続けられると判断して、大きな動揺はありませんでした。
治療は眼圧を下げる点眼薬を1日1回さすことだけです。こちらにしたら「たったそれだけ?」って感じなのに、医師はとてつもない決断がいるみたいな言い方で、「点眼薬を始めたら毎日欠かさずやり続けなければいけません」と言うんですよね。途中でやめちゃう人が多いのかな。
おかげさまでそれから10年、ギリギリ正常な眼圧をキープできているので、いまのところ日常生活で支障はありません。
ただ、五線譜が見にくくなってきている感じは確かにあります。初見の演奏は特に注意が必要です。自信たっぷりで楽譜通りに弾いたら、まったく違う音でびっくりすることがあるのです。つまり五線がズレて見えてしまうのです。乱視もあるのにメガネなしのスタイルを守っているのも悪いんですけど、以前はそんなことなかったので「まいったな」と思っています。雰囲気のある薄暗いステージでは、なおさら見えないので、今はステージの照明の光量をMAXにしてもらうようになりました。
緑内障はそんな状態で4カ月に1回受診をして点眼薬を処方していただいています。おかげさまでまつげが伸びまして、電車の中で隣に座った女性から熱い視線を感じるようになりました(笑)。
「緑内障の点眼薬はまつげが伸びる」というのはちまたでよく言われていて、周囲の女子たちに非常にうらやましがられています。
でもそれは薬の副作用であって、決してファッションで使ってはいけないもの。横流し? してませんよ(笑)。医師には、「常用している薬の申告をするときは必ず書くように」と言われています。「目薬なんて薬のうちに入らない」と思いがちですけど、軽く考えてはいけないということでしょう。
そんな中、つい先日の検診で「白内障もきてますね」と指摘されてしまいました。そういう年齢なんだなと感じています。とりあえず白内障は経過観察の段階です。
■中学時代から左足に不具合も
この程度では、このコーナーに登場する資格はないのかもしれないけれど、年齢を重ねたなりにいろいろガタはきていて、最近「肺に影がある」と言われて再検査したら「肺じゃなくて動脈にハッキリした影がある」と判明したばかり。半年ごとにCT検査をする経過観察中です。がん保険には入っているので、「もしがんになったら保険料の払い込みが免除になるな~」などと不謹慎なことを考えたりしています。
また、病気ではないのですが、中学時代に体育の授業でハードル走を褒められたことで調子に乗って何度も跳んでいたら、ある日、左膝が曲がったまま伸びなくなったことがありました。医者に行っても原因がよくわからず、いつの間にか治りました。でも、その後も左足は右足ほど俊敏ではなかったようで、よく左足だけケガをして松葉づえをつく学生時代でした。ただ自分はバイオリンを弾く人間なので、極端なことを言えば足はどうでも大きな問題ではありません。
大人になってからも「古澤さん、足引きずってますよ」と言われてきましたけどどこ吹く風で、自覚したのはごく最近です。10年前から始めたサーフィンでレベルアップする中、左足をきちんと意識しないと右足の動きについていけてないことをやっと発見したのです。その後、サーフボード上での意識改善を応用して、ステージ上でも「どんなふうに足を置くと安定するかな」といろいろ試行錯誤しています。
もともと自分の利き手は左なのにバイオリンは右手用です。そうなると左足が軸足じゃなければいけません。でも自分は左利きなので本来の軸足は右。そういうチグハグなことが無意識にストレスになって、いろいろな不具合が出てくるのかもしれませんね。(聞き手=松永詠美子)
▽古澤巖(ふるさわ・いわお)
東京生まれ。BSテレ東「Dの旋律」(土曜深夜25時30分~)に出演中。6月に全国でTAIRIKプロデュース「品川カルテット」開催。最新アルバム「コンチェルト~海~VIOLIN CONCERTO NO.6 ‘ILMARE'」(HATS)発売中。
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