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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

「粒子線」の保険適用拡大 X線を上回る効果も見逃せない短所

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 たとえば適用拡大の一つ、局所進行すい臓がんは、がんがすい臓の表面を越えて周りの重要血管と血管周囲に浸潤しつつも遠隔転移はしていない状態。手術はできず、抗がん剤で治療しても成績はよくありません。5年生存率は、ステージ2で2割、ステージ3だと6%程度です。

 それが抗がん剤を併用した粒子線の多施設共同研究J-CROSでは、2年局所制御率(2年間照射部位に再発がない割合)が62%、1年局所制御率が82%でした。全症例の2年生存率は46%です。一方、副作用は少ないことが報告されています。

 ほかのがんについても同様に臨床試験の成績がいい。保険適用になったことで、以前は約300万円かかった医療費が、高額療養費制度も使うことで多くの人は数万円から十数万円にまで抑えられるのです。

 そんなメリットの半面、デメリットもあります。粒子線には、陽子線と重粒子線の2種類あり、1カ所で2つ備えているのは兵庫県立粒子線医療センターのみ。ほかの24カ所はいずれかです。アクセスのしにくさは、ネックです。もう一つ、それぞれのがんで、対象となる患者が限られるのも壁に。条件ナシは、前立腺がんのみです。

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