気圧や揺れが影響する「高層階症候群」は本当にあるのか
日本固有の問題としては、建物全体の「揺れ」があります。地震でなくても、強風で建物が揺れて船酔いのような症状が出るという人がいます。また知覚できない細かい揺れが、健康にマイナスだという意見もあります。日本の高層建築は、耐震のために柔構造を採用しているため、海外の建築と比べて揺れやすいのです。
ただし、高層階症候群を支持する科学的な論文は、国内でも海外でもほとんど見当たりません。しかし否定する論文もほとんどありません。というのも、こうした問題を真面目に取り上げる研究者が少なかったからです。研究手段も限られていました。
しかし、2~3年前から風向きが変わってきました。VR(バーチャルリアリティー)を使った研究が可能になってきたからです。気圧・気温・湿度などを調節できる部屋とVRを組み合わせた仮想高層ビル実験室が、世界の大学でつくられ始めています。今後は高層階と健康の関係が科学的に解明されていくことでしょう。