88歳の夫を86歳の妻が介護…いつまでがんばればいいのか
これで自分たちのお墓はつくらなくて済む。もし、子供や孫たちがお墓参りに来ることがあったら、その供養墓を拝んでもらうのです。そう考えて、その時はひと安心しました。
ところが、今回のまさかの心筋梗塞で、死ぬ前までの生活が急に心配になったのです。夫は、いつまで生きられるのか分かりません。
S病院に移って3日後、面会に行くと、夫は「病院の食事はおいしくない。味がない」と不満を口にしました。妻は「今までさんざんおいしいものを食べて、それで糖尿病にもなったのだから仕方ないのよ」と答えました。病院が許可してくれたので、次の見舞いの時に海苔の佃煮のビン詰とご飯のふりかけを持っていきました。
家の玄関先で、隣に住むおばあさんに夫のことを話すと、こんなことを言われました。
「あなたは大変だね。病気はがんの方がいい。私の夫はがんであと3カ月の命と言われ、家で亡くなった。あと3カ月と言われて動揺はあったけれど、3カ月がんばればいい。ただ、亡くなったあとは寂しいですよ。がんでない病気で家に帰されると、いつまでがんばればいいのか……大変でしょう。でも、寂しくないからいいわよね」
翌朝、妻は洗濯物を干しながら、昔、父がよく口ずさんでいた軍歌が自然に出てきました。
「どこまで続く、ぬかるみぞ~」