多発性骨髄腫の80代男性「打つ手がないなら点滴はやらないで自然でいたい」
その患者さんは、息子さんと2人暮らしの80代男性。2017年に多発性骨髄腫が分かり治療を受けていましたが、打つ手がなくなり、鎮痛剤による疼痛(とうつう)管理だけの対処となっていました。やがて通院も困難となり、私たちのところで在宅医療を開始することになりました。
「痛くないかと聞いても、意味のない言葉が返ってくるんです。この先を考えると、賃貸住宅なので、大家さんに迷惑かけることにならないか心配です」(息子)
自宅で亡くなった時に、警察を呼ばなければならないんじゃないかと心配される方がたくさんいます。実は在宅医療を受けていれば、亡くなる時に医師が立ち会っていなくても、在宅医療の医師が死亡診断書を書けるので、警察の介入はありません。そう伝えると、息子さんは少し安心した表情を浮かべました。
「おつらいところは?」(私)
「ここ(胸)のところだけ」(患者さん)
「痛み止めはもらってるんですが、意識がぼーっとしてます。病気のせいか薬のせいかは分からないんですが」(息子)