放置れされがちな皮膚疾患 特に高齢者ではQOLに大きな影響が
そんな各現場で対応を重ねていく中で、患者さんの皮膚や足指などの状態が健全であることは、患者さんのQOL(生活の質)を向上させる上で重要な要素であると改めて実感できたのでした。
20年ほど前、細菌の感染で炎症する蜂窩(ほうか)織炎で両足の皮膚移植を受けた93歳の患者さん。それ以来、一進一退を繰り返していました。
むくみがひどく、物が皮膚に当たっただけでも剥離してしまうという非常にデリケートな皮膚の状態。あかが菌の繁殖につながるため、訪問看護師やデイサービスでは、せっけん洗浄を行うようにお願いしていました。
ただ、免疫の弱い高齢者では、皮膚からの感染でも重症化し、入院による点滴が必要になることもあります。熱感がある時は、検査の結果をにらみながら抗生剤も処方するようにしていました。
毎週こまめな洗浄と、皮膚科医による「抗生剤+ガーゼ+弾性包帯巻き直し」といった処置をコツコツと繰り返した結果、在宅医療を開始した1年前にはあれほど黒くただれていた皮膚が、次第に内出血の赤色を経た肌色に変わっていったのでした。
療養される高齢の患者さんに対し、「年だから仕方ない」と放置しがちな皮膚疾患。しかし、患者さんの療養生活をより快適にするためにも、いま一度見直してみる必要があると考えるのです。