“やせ薬”としても使われる糖尿病治療薬はがん予防にも効果あり
大腸がん、多発性骨髄腫、食道がん、子宮内膜がん、あるいは、子宮体がん、腎臓がんも、GLP-1受容体作動薬を利用している患者は発症する可能性が大幅に低くなった。
■心臓病や認知症のリスクも抑制
驚きなのが、肥満関連がんだけでなく、心臓発作のリスク軽減、喫煙やアルコール依存症などの中毒行動の抑制、関節リウマチの再発軽減、パーキンソン病、アルツハイマー病、変形性関節症、非アルコール性脂肪肝疾患などへの効果もあったことだ。
GLP-1は、もともと人間の体にあるホルモンで、血糖値を下げる働きがある。GLP-1受容体作動薬は、体の外からGLP-1を補う薬だ。食事をして、消化管のなかに食べ物が入ってくると、小腸からGLP-1が分泌され、血液によって膵臓に運ばれる。膵臓にたどりついたGLP-1が、インスリンの分泌を促すという仕組みである。インスリン療法は、インスリンを体外から補う治療法だが、GLP-1受容体作動薬は、自分の膵臓からインスリンを分泌させる治療法ということだ。
それにしても「GLP-1受容体作動薬」は、なぜ、これほど多くの効果を発揮するのか。一連の研究報告を「医療ガバナンス学会」で紹介しているボストン在住の内科医・大西睦子氏に聞いた。