会社員時代は経理担当で几帳面な性格の78歳男性。認知症を発症した今も…
この患者さんは認知症の初期の段階で、もともとの性格か、じっとしていることが苦手。不整脈や糖尿病などといった慢性疾患を患っています。
お聞きすると、会社員時代は経理を担当し、数字を細かく確認することが得意だったとのこと。几帳面な性格に仕事の習性も加わり、家計簿の数字を定規で書きそろえたり、全てのレシートをコピーしたりするほどだったそうです。
それがいまは、自分でやろうとしても、うまくできない。我慢できずに奥さんや息子さんに強要するようになり、家族の方も独特な介護疲れを感じているとのことでした。
「これはボク個人の電話番号で個人情報なので、他言しないように。今言った電話番号を読み上げてごらん」
「あなた何歳なの? 若いね、まだ社会に出て3年目なのね。もう少しスムーズに案内できるようになったら、もっといいと思うよ」
病気により、これまでのことができなくなった今でも、元の性格が色濃く出ているのは、彼が自信を持って仕事に取り組んでいたことの証拠のように感じます。
自分らしく生きようとする自尊心は誰でも持っていると、私は思うのです。