新型コロナワクチンで指摘される“懸念”には科学的証拠が不足している
10月から高齢者などを対象にした新型コロナワクチンの定期接種が始まりました。現在、使用可能なワクチンは、米モデルナの「スパイクバックス筋注」、米ファイザーと独ビオンテックの「コミナティ筋注」、武田薬品工業の「ヌバキソビッド筋注」、第一三共の「ダイチロナ筋注」、Meiji Seikaファルマの「コスタイベ筋注用」の5製品で、オミクロン株の派生型「JN.1」系統対応で承認を得て、供給されています。
最も多く使用されると考えられるのはmRNAワクチンで、コミナティ筋注、ダイチロナ筋注、スパイクバックス筋注の3種類がそれに該当します。なかでもコミナティ筋注は、今までの使用実績や1人用のシリンジ製剤が販売開始になったことも考え合わせると、最も多く使用されるのではないかとみられています。
残る2種類はmRNAワクチンではありません。ヌバキソビッド筋注は組み換えタンパク質ワクチンで、このタイプのワクチンは、インフルエンザウイルスワクチンや帯状疱疹ワクチンなどにおいて承認実績があります。
コスタイベ筋注用ワクチンは、「レプリコン(自己増幅型)ワクチン」と呼ばれる新たなワクチンです。細胞内に送達されると自己増殖されるよう設計されているため、少ない薬剤量で長期間にわたる免疫を得られると考えられています。このレプリコンワクチンに含まれるsa-mRNAは自己複製することから、「接種者から非接種者に感染する(シェディング)の懸念がある」と指摘する声も上がっています。それを受け、「レプリコンワクチン接種者の入店お断り」を表明するお店が現れたり、医療関係者の一部から懸念が表明されるなど、接種に関して心配する声も上がっています。
しかし、レプリコンワクチンのシェディングの可能性は理論的には指摘されていますが、現時点で確立された科学的証拠はありません。エビデンスも不足しているためさらなる調査が必要で、過剰な警戒心をあおることは適切ではないように思われます。