俳優の三夏紳さん前立腺がんの全摘手術後に執刀医から頭を下げられ…

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大腸がんの手術も経験

 じつは“誤診”はそれだけではないんですよ。話はさらに10年前にさかのぼり、大腸がんのときもちょっと似たようなことがありました。

 そのときは便が細くなって「おかしいな」と思っていたら血便が始まって、病院に行くと「大腸がん」と告げられました。検査のカメラが入らないくらい大腸に大きな腫瘍があったのです。さらに肝臓に転移していて、ステージ4のがんだと……。

「即手術をして大腸がんと肝臓がんを取らなくちゃ命に関わる」と言われたのが年の暮れでした。でも1月15日から17日まで舞台があったので、即断できませんでした。それでも、「肝臓に転移したらもうダメかもしれない」という思いもよぎって、さんざん悩んだ末に舞台が終わってから手術することを決意しました。

 先生は渋々了承してくれました。「その代わり食べていいのは豆腐とうどんだけですよ」と言われまして、お正月で周りがお餅やおせち料理を楽しんでいても、自分ひとり豆腐とうどんだけで過ごしました。肛門からは常に出血があるので、紙おむつをしながら3日間の舞台を務め、18日には入院し、20日に開腹手術を受けました。

 意外な事実が分かったのはやはり術後でした。先生の話では、「肝臓にあったものは“がんの顔”をしていなかった」というのです。なので、大腸がんだけ摘出したとのことでした。画像ではがんのように見えたけれど、実際に見たら違うことがあるのですね。だから肝臓は今もちゃんとあって、問題なく過ごしています。

 ついでに言うと、脳梗塞は2013年ごろ。朝、トイレに立とうとしたら立てなくて、「救急車を呼んでくれ」と言おうとしたら、ろれつが回っていなかった。その様子を娘が見て、即救急車を呼んでくれたのです。処置が早かったおかげで後遺症もなく助かりました。

 どんな病気も与えられた運命なのだと思います。実際、自分も2、3回、死を覚悟しましたしね。でも、なんでしょう、自分は役者なので、入院中でも「芝居がやりたい」と思っていました。劇団の台本は全部自分が書いているから、いつも次の芝居を考えることで病気にのみ込まれずに済んだのかもしれません。

 絶えず目標を持つこと──それが元気の秘訣じゃないでしょうか。あとは色気を忘れないことかな(笑)。いつまでも男心を持って、女性にモテたい。そんな色気だけはいまだに健在です。

(聞き手=松永詠美子)

▽三夏紳(みなつ・しん) 1941年、広島県出身。61年に大映ニューフェイス15期生として入社し、翌年、映画「雪の降る街に」でデビュー。数々の映画や舞台、テレビドラマに出演するほか、映画の吹き替えや歌手活動も行う。92年から監督・松生秀二と劇団・三松座を立ち上げ、座長を務める。次回公演は6月予定。東京・荻窪の「スナック絆」のオーナーでもある。

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