「五輪史上最も不公平な大会」で日本メダル量産、公平性欠如しまくりの追い風吹く
日本オリンピック委員会(JOC)は、東京五輪での金メダル獲得目標を史上最多の30個に設定している。2018年当時、JOCの選手強化本部長だった山下泰裕現会長は、「30個を獲得すれば、世界3位(の金メダル数)は達成可能」と胸を張っていたものだ。
■コロナ禍が追い風
23日、その東京五輪は開幕までちょうど1カ月を迎え、各競技団体関係者からも「過去最多のメダルを狙う」とソロバンをはじく声が聞かれ始めている。男子66キロ級の阿部一二三を筆頭に所属4選手を柔道日本代表に送り込む、実業団「パーク24」の吉田秀彦総監督は壮行会で、「全員が金メダルの力がある。4人揃って持ち帰ってほしい」とゲキを飛ばしていた。
「前回16年のリオデジャネイロ五輪での日本の金メダルは12個。JOCが掲げる30個はともかく、リオを大幅に上回るのは間違いないと思う。コロナ禍での開催が追い風になるのは確実ですから」
とは、某民放局の五輪担当者である。
合宿中止にワクチン格差
実際、過去の五輪でここまで「地の利」を生かせる大会もなかったのではないか。このコロナ禍で全国各地で行われるはずだった各国の事前合宿は取りやめが相次ぎ、受け入れを断念した自治体は100を超える。
日本で合宿ができない国は開幕直前に選手村に入ることになり、時差や気温・湿度など、短期間で日本の環境に慣れなければならない。
現在、海外選手団で事前合宿のために入国しているのは豪州(ソフトボール=群馬)、ウガンダ(競泳、ボクシング、重量挙げ=大阪)、デンマーク(ボート=秋田)のみ。受け入れを決めた他の自治体も、感染リスクの観点から期間を大幅に短縮せざるを得ず、アルゼンチン(ボート=長野)は7月10~18日、イタリア(ボート=長野)とポルトガル(体操=新潟)は13日から約1週間と開幕の10日前程度の来日というタイトなスケジュールになっている。
19日に来日したウガンダ選手団は9人のうち1人がPCR検査で陽性が判明。陰性が確認されるまで入国が認められず、国の施設で隔離されている。合宿先の大阪・泉佐野市に入った残り8人も保健所から濃厚接触者に特定されたことで、練習を控えホテルの個室で缶詰め状態。この日(23日)になってもうひとり、コロナ感染したことが明らかになった。ウガンダは大会1カ月前の入国でまだ余裕があるが、同じことが開幕直前、試合直前に起これば、選手は空港でオリンピックを終えることにもなりかねない。
■ライバルが辞退も
すでに五輪から手を引いた国や選手も続出している。野球ではコロナを理由に中国、台湾、豪州が最終予選を辞退。男子テニスでは世界ランク3位のナダル、同5位のティエム、同12位のシャポバロフが相次いで不参加を表明し、馬術では北京五輪金メダリストのエリク・ラメーズが感染拡大の不安を理由に欠場すると発表した。
辞退に加えてメダル候補選手が調整に苦戦すれば、日本にとっては大きなアドバンテージ。そもそも日本は開催国という地の利があるが、コロナ禍がその不公平さに拍車をかけそうだ。
公平性の欠如はワクチンでも起きている。現在日本で使用されているのはファイザー、モデルナの2種類。アストラゼネカは承認されたものの、使用が見送られている。
日本選手団がIOCから提供を受けたのはファイザー製だが、各国の事情によって接種するワクチンの種類はさまざま。入国時に陽性となったウガンダの選手はアストラゼネカワクチンを2回接種済みだった。アストラゼネカ製は取り扱いやすい一方、効力は約70%。90%以上の有効率があるファイザーやモデルナと比べて低い。ウガンダの選手が感染したのも、効力の低さがアダとなった可能性もある。
インド株の感染拡大を理由に、入国後3日間も外部との接触を禁止されるインド選手団は、同国のオリンピック委員会が「入国が認められるのは競技の5日前、(さらに3日間の接触禁止で)直前の調整ができない。不公平で差別的だ」と猛反発する事態に発展している。日本がオリンピック史上最も不公平な大会でメダルを量産したとしても、選手は複雑ではないか。