監視社会に陥った近未来の日本を描いた 赤川次郎氏に聞く

公開日: 更新日:

 亜紀の父親である浩介は、介護施設に入居している。脳出血で倒れ、言葉も話せない状態なのだ。かつて浩介は、反権力ジャーナリストの急先鋒として、検察官時代の重治と敵対していた人物だった。しかし、巨大な権力は浩介に関わる者を次々といたぶり、消し去り、反権力活動は徹底的に叩き潰されていた。

「国会前で盛んに行われている安保法案に対する反対デモには、若者たちの参加も増えています。ところが、デモのようなものに参加すると、就職活動の際に企業に敬遠されるという声も聞こえてきます。これのどこが自由な国か。自分で考えることも行動することもしない、余計なことはしない人材を企業は求めているのでしょうか」

 物語は、父の過去を知った健司が、亜紀と共に監視社会がもたらした悲劇を探り、権力にあらがう姿が描き出されていく。著者による切実な問題提起が込められた本作は、読み進めるほどに近未来というほど遠くない、間近に迫った現実ではないかと思わされる。

「執筆を開始したのが2012年。それから3年で、日本のありさまや政権の暴走が、物語に急速に近づいてきていると感じます。日本は、戦後処理の仕方が影響してか、重大な問題ほど誰も責任を取らない国になってしまいました。福島第1原発の事故も、あれほどの被害をもたらしておいて責任の所在はうやむやのまま。再び戦争が起きても、国は責任を取らないし、国民を守らないでしょう」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高嶋ちさ子「暗号資産広告塔」報道ではがれ始めた”セレブ2世タレント”のメッキ

  2. 2

    フジテレビ「第三者委員会報告」に中居正広氏は戦々恐々か…相手女性との“同意の有無”は?

  3. 3

    大阪万博開幕まで2週間、パビリオン未完成で“見切り発車”へ…現場作業員が「絶対間に合わない」と断言

  4. 4

    兵庫県・斎藤元彦知事を追い詰めるTBS「報道特集」本気ジャーナリズムの真骨頂

  5. 5

    歌手・中孝介が銭湯で「やった」こと…不同意性行容疑で現行犯逮捕

  1. 6

    大友康平「HOUND DOG」45周年ライブで観客からヤジ! 同い年の仲良しサザン桑田佳祐と比較されがちなワケ

  2. 7

    冬ドラマを彩った女優たち…広瀬すず「別格の美しさ」、吉岡里帆「ほほ笑みの女優」、小芝風花「ジャポニズム女優」

  3. 8

    佐々木朗希の足を引っ張りかねない捕手問題…正妻スミスにはメジャー「ワーストクラス」の数字ずらり

  4. 9

    やなせたかし氏が「アンパンマン」で残した“遺産400億円”の行方

  5. 10

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」