「天才と異才の日本科学史」後藤秀機著
「天才と異才の日本科学史」後藤秀機著
開国からわずか150余年の日本が、ノーベル賞受賞者を数多く輩出し、科学大国となれたのはなぜか。開国から現在まで、各分野の科学者たちの軌跡を描いた科学エッセー。
緒方洪庵が主宰する適塾の塾頭だった福沢諭吉は、安政4(1857)年、舶来の物理の本で、摩擦電気も静電気も電気分解も、すべてイオン(電気を帯びた粒)が起こす出来事として統一的に説明されていることを知る。適塾は医学や科学の勉強に力を入れていたが、諭吉は物理こそが森羅万象の法則性に至る西洋学問の王者だと見抜き、明治元(1868)年の「訓蒙窮理図解(くんもうきゅうりずかい)」を皮切りに数十冊の物理入門書を刊行したという。
以降、科学の発展に寄与した学者たちの足跡をたどり、近現代科学史を群像劇として描く。
(KADOKAWA 1584円)