「オリーブの実るころ」中島京子著
「オリーブの実るころ」中島京子著
母の死後、アパートで1人暮らしをする父の豊と連絡がつかなくなった。心配する息子のひろしに「終活をしている。しばらく帰れません」とメッセージが届く。どこにいるかだけでも教えてとメールをすると、数日後に「ヒューゲルベルクとブライテンインゼルの間あたり」と返信があった。
豊がいたのは、南ドイツではなく瀬戸内海に面したとある町だった。そこで市議選に立候補した38歳のシングルマザーの選挙運動のボランティアをしていたのだ。ネットサーフィン中に目にした動画で彼女のことを知り、居ても立ってもいられず、定期預金を解約して駆け付けたのだ。(「ローゼンブルクで恋をして」)
ほかにも離婚や妊娠など、多くの人が直面する人生の問題をテーマに、軽やかに料理し、描く短編集。
(講談社 715円)