心に刺さる…「決算!忠臣蔵」堤真一の“管理職”赤穂浪士
対照的に“堤・内蔵助”はお金に無頓着で女好きの気楽なお調子者。下から突き上げられ、上からにらまれ、その度に「討ち入りやめとこか?」と悩む。“管理職”の内蔵助をコミカルに演じている。
監督は「殿、利息でござる!」など経済時代劇も得意の中村義洋。
この映画は見せ方も工夫が多い。古文書の現代語訳はもちろん、財務処理のプロセス、具体的な経費の金額などは現代の貨幣単位に換算してテロップで表示される。
蕎麦1枚の値段は十六文(480円)だったから、一両小判は12万円といった具合に、貨幣価値の説明もその度に挿入されるから、分かりやすい。
この映画の武士たちのお金に対する態度も、現代のサラリーマンに重なる。
何でも領収書をもらう。自腹だと途端に財布のひもが堅くなる。会計の時はトイレに消える。さらに赤穂浪士たちが勘定方に提出する、わけの分からない請求書、発注書、領収書の数々……加えて後先を考えずにお金を使いまくる番方(営業)と役方(経理)の対立など、まるでどこかの会社を見ているような気分に。
赤穂浪士たちを笑いながら、私たちはお金の使い方に人間の“性分”がリアルに反映されることに気づき、わが身を振り返り、重ね合わせることになる。
(荒木久文=日本映画ペンクラブ会員、報知映画賞選考委員)