【腫瘍IVR】 国立がん研究センター 中央病院・IVRセンター(東京・築地)
では、具体的にどんなケースで行われるのか。
「たとえば、がん性腹膜炎などおなかに水がたまる難治性腹水に対するシャント術です。IVRで体内にチューブを埋め込み、心臓近くの静脈に腹水を戻すことで腹水がたまらなくなります。また、骨転移で骨が弱くなり、痛みで動けないような場合には、病巣部に樹脂を注入します。即効性があり、翌日には歩けるようになる患者さんもいます」
がんに潰されて内側のスペースがなくなってしまった血管や消化管にステント(金属製の網状の筒)を挿入して再開通させる治療。鼻から胃や腸に挿入されているチューブを、首から挿入して鼻を楽にする治療など。がんに関わるさまざまな苦痛に対して、最小限の侵襲で多種多様に応用できるのがIVRの強みだ。
しかし、広く普及させるにはエビデンス(科学的根拠)が必要。荒井センター長は、2002年に腫瘍IVRを臨床試験により評価する「日本腫瘍IVR研究グループ(JIVROSG)」を結成。現在、全国90以上の施設がデータ作りに参加している。
「JIVROSGで行った臨床試験では、さまざまな緩和IVRにより若干の相違はありますが、症状が改善する頻度はおおむね70%前後でした。どのような症例に活用できるかの判断には専門的知識が必要ですが、選択肢のひとつとして多くの方に知っていただき、活用していただければと願っています」