「多剤併用」「長期処方」の患者を手術する際はまず薬の整理をする
そのために重要なのが薬剤師や管理栄養士といった専門家です。彼らがきちんと下支えしてくれるおかげで、われわれは本来の治療に専念することができます。
しかし、患者さんが訪れる施設によっては、不要な薬の整理をしてもらえないまま、手術や、さらなる投薬治療が行われ、結果的にマイナスになってしまうケースもあります。かつて、私の義母も似たような状況で亡くなっています。
高齢になって膝の関節に痛みが出始めたため、近所のクリニックを訪ねたところ、ある漢方薬を勧められました。ところが、義母はもともと高血圧体質で、その漢方薬の副作用でさらに血圧が上昇。悪性高血圧(高血圧緊急症)になってしまったことで腎機能に障害が起こりました。結局、それから人工透析を受けるようになり、最後は透析の合併症で亡くなってしまったのです。
患者さんが訪れる施設によって、時には命を落としてしまうことがある。これは、多剤併用や長期処方が当たり前のようにたくさん実施されている環境によって生まれています。それを運よくくぐり抜けた人が長生きして、くぐり抜けられなかった人はさらなる治療や療養が必要になったり、場合によっては亡くなってしまうのです。