29歳で発達障害と知り…生活の対処法が見つかると前向きに
「命じられた指示がよく分からず、細かい内容を忘れてしまうことが多かった。『こんなこと普通は分かるよね』『また間違ってるの』と高圧的に言われると、頭がパニックになり、ますます間違えてしまいました」
ひとくちに発達障害といっても、人によりさまざまな特性がある。複数の仕事を並行して行うマルチタスクを苦手とする人は多いが、福田さんは、言葉で指示を受けるのが苦手だった。
遠回しに言われた内容をくみ取れず、相手の意図とはまったく違ったことをしてしまったこともあったという。留学のプランを提供するという仕事内容も、さまざまな留学の価値観があるなかで共感できないこともあり、ただ留学を売り込むという作業になっていた。結局、以前の仕事で発症したうつ病が再発し、仕事を辞めることになった。なぜ自分は仕事がうまくいかないのか? その原因を求めて、クリニックで成人知能検査であるWAIS―Ⅲなどの検査や問診を受け、初めて自分が発達障害だと知った。
発達障害にはさまざまなタイプがある。医師の見立てでは、ADHDだった。ADHDは、注意欠如、多動性障害ともいわれ、集中できない、じっとしていることができないといった特性があるとされる。福田さんは疲れると言語面での複雑なやりとりが理解できにくくなる傾向がある、それが医師の説明だった。診断時、福田さんは29歳。障害を受け入れながら生きていくための方法として、障害者手帳を取得した。
「発達障害の診断を受けたとき、これで自分の生活のしづらさへの対処法が見つかるのでは、と思ったんです。だから、手帳の取得で少し生きやすくなるなら、と前向きに捉えていたんです」
(つづく)