遺伝情報が変化 強い恐怖やショックは子供に受け継がれる

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 そこでケリー博士らは、恐怖心を植え付けられた雄マウスから子孫に受け継がれた精子の中から遺伝子「M71」を調べた。この遺伝子は鼻の中で、桜の花の匂いにとくに敏感な嗅覚受容体の機能を制御する遺伝子。しかし、子孫マウスの「M71」の塩基配列には異常はなかったという。ただし、後成遺伝的痕跡が見られたことから、この痕跡が遺伝子に変化をもたらし、子孫の代に再び発現したと考えられる。

「本来、生物の遺伝情報はDNAに刻まれて後世に伝えられますが、生活習慣やストレスなどの刺激的な出来事により、それが後天的に変化を起こして遺伝情報が切り替わってしまうことがあります。これをエピジェネティクスといいます。ケリー博士らの実験では実験用の雄マウスの精子の遺伝子にエピジェネティクスが起きたと考えられるのです」

 ケリー博士らはその後、恐怖心を植え付けられた実験用の雄マウスの精子を使い、別の雌マウスに人工授精させたところ、やはり生まれてきた子供マウスはサクランボの匂いに恐怖心を持つしぐさを見せたという。

「ストレスを感じると人はコルチゾールと呼ばれる副腎皮質ホルモンを分泌しますが、トラウマを受け継いだ人は、他の人なら大したことないと思うようなストレスでも、コルチゾールが過剰に分泌されるのです。コルチゾールが大量に分泌されると、クッシング症候群と呼ばれる病態が出現することがあります。血圧が上がりやすくなり、肥満が増えたり、糖尿病が多かったりします。こうした病態になるには、トラウマ遺伝子が影響しているのかもしれません」

 もし、あなたが理由もなく高いところが苦手だったり、閉所恐怖症だったり、先端恐怖症だったりしたら、あなたの祖先が、過去に高いところや狭い場所などで異常な恐怖を覚えるような経験をしたのかもしれない。

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