うつ病の原因は働く側にも 禁酒と7時間睡眠で不調を改善
中でも、井原医師が重要視するのが、規則正しい睡眠覚醒リズムだ。
「私は、うつ病や双極性障害の基底に睡眠・覚醒リズムの失調があると考えます。気分の甚だしいアップダウンは、不安定な睡眠覚醒リズムがもたらした2次災害にすぎません」
受診する患者には、毎日の起床時間と就寝時間を記録した「睡眠日誌」の記入を求めている。
「私は、就寝と起床のリズムのデータを見れば、その人の精神状態が今後悪化するか否か、大体予想できます。あとは昼間の眠気に注目します。昼下がりに眠くなって、30分ほどの昼寝で回復するなら心配なし。でも、午前中からずっと頭が重いなどの状態はよくない。また、夕食後すぐに眠くなっていったん寝た後、真夜中に目が覚めて3時間くらい起きているとか、睡眠が2分割になっているケースも、睡眠効率としてはよくない。そうならないためには、例えば23時に寝て6時に起きるというように、睡眠のリズムを毎日一定にするように心掛けることです」
井原医師によれば、躁とうつを繰り返す双極性障害の人は、何かを始めると熱中して体が疲れていることに気付かずに睡眠を削って仕事をしてしまう。そのため、平日には4、5時間しか眠らず、休日に9時間以上寝だめするということをしがちだが、これが心の健康の大敵。この睡眠時間の激しい長短が気分変調を起こす原因なので、休日の寝だめが必要なくなるほど平日は十分な睡眠をとり、一定の睡眠リズムを心掛けるべきだという。
実際、他の病院で「双極性障害」と診断されたが、睡眠リズムを整えるだけで劇的に改善し、薬が必要なくなった患者さんを多数経験しているそうだ。
(フリージャーナリスト・里中高志)