「私、食道がんと言われた」ケンカ別れした娘にメールを送った
■「あなたの命だから」と言われたが…
Dさんは、自宅に帰って担当医の話を思い出します。
「先生の説明はよく理解できる。あなたの命ですからあなたが決めてください……それはそうかもしれないが、治療法は一番良い方法を先生が選んでくれればいいのに……」
「私はがんで死ぬのだろうか? この先、私の人生にいいことは何も期待できないのではないか?」
「それにしても『あなたの命です』って、そうなのだろうか? 命は私のものなのだろうか?」
医師からたばこもお酒も止められて、夕食のおかゆさえ胸につっかかる……。ラジオから流れてくる演歌を聞いていたら、Dさんは急にみじめな気持ちになってきました。
「あなたの命? 自分が好んで生まれた命でもない。いま、食道がんのこの体に宿っている命って、本当に自分の命なの?」
ふと、命のことを考えるなんて何十年ぶりだな……とも思います。そして、「あなたが決めてくださいと言われたけど、どっちに決めても私にはこの先の人生にいいことなんてなんにもない」と、また暗い堂々巡りが始まりました。