病院では患者の尊厳よりも「安全」と「管理」が優先される
コロナ禍で在宅医療を検討する人が増えているという。院内感染を恐れて病院での治療を敬遠する。そんな考えが広まっているのだ。
人生のエンディングをどのように迎えるのかは、病状や家族関係、経済的側面など、さまざまな個別の事情が絡んでくる。誰にも当てはまる正解はないだろう。それでも押さえておくべきことはある。蘆野さんは「病院と在宅医療では、“看取りの仕方”に違いがある」と言う。
「病院では救命を目的にしているため、最後まで積極的な治療を行います。その際に最優先されるのが“安全”です。苦痛が伴う治療で患者がじっとしていられない場合は、安全確保のために鎮静薬を使ったり、手指が動かないように硬いミトンの手袋をはめたり、ヒモで四肢をベッドに縛って体を拘束したりすることがあります。こうした“管理”のために“患者の尊厳”を維持できないことがあるのです」
加齢や衰弱により細くなった血管は、点滴の針が入りにくい。薬が漏れない良好な血管が見つかるまで、何回も針を抜き差しすることもある。時には首の太い血管から点滴の針を入れることもあるという。