口から食べられなくなった時の点滴は苦しみを増幅させる
しかし、食べられなくなったり飲めなくなった患者さんを目の前にして、「点滴をしない」という選択は、家族にとってとてもつらいことでしょう。でもそれに向き合っていただきたいのです。
そのためにも、どのような最期が一番いいのか、患者さんと家族でたくさん話し合ってもらいます。迷った時や不安なことがあれば、在宅医療チームがいつでも一緒に考えるようにします。
末期胆管がんの60歳の男性は、入院から在宅医療に切り替えた当初は治療を諦めきれず、何かをやらずにはいられないという気持ちがひしひしと伝わってきました。それまでも民間療法などさまざまな薬を試しており、積極的に治療に臨んできたのです。ですから点滴も「ぜひぎりぎりまで」とのことでした。
私たちとしても、患者さんやご家族の意向を無視してまで点滴を止めるわけではありません。しかし前述の通り、点滴は患者さんの苦しみの原因になりかねない。点滴についてだけでなく、呼吸やおしっこの量などが、最期を迎えようとする状態にどのようになるかを丁寧に何度も説明し、その上でもし口や喉が渇いているなと思ったら、氷のかけらをなめさせてあげて、寄り添うだけで患者さんは十分幸せだとお伝えしました。