課題はあってもロボット手術はさらに応用される可能性がある
前回に続き「手術支援ロボット」についてお話しします。1999年に発売された米国メーカーの「ダヴィンチ」は、2億~3億円の販売価格に加え、年間の維持費が1000万~2000万円かかること。また、ロボットアームだからこそ可能になる複雑で細かい手技が本当に必要になるケースは、心臓血管外科においてはそれほど多くはないことなどを考慮すると、ロボット手術の普及がさらに進むためには課題が残っています。
本当に患者さんの負担が小さい低侵襲な手術なのかどうかについても、まだ確かではありません。ロボット手術は、大きく切開する一般的な手術に比べると小さな穴を開けるだけなので、出血が少なく術後の回復も早いとされています。また、通常の手術視野では視野が確保しにくかったり、鉗子の操作に制限が加わるような手術、具体的には前立腺を含む骨盤内手術や開胸による肺手術のような手術で、メリットが大きいといえるでしょう。
ただ、それ以外では従来の手術に比べて時間がかかる傾向があるといえます。切開手術に比べると視野が狭く、手術の種類によっては手技も制限されることから、不測の事態を招かないようにするために丁寧に時間をかけて手術が進められるからです。