がんとの共生に「抗がん剤」は必ずしも必要ない 在宅医療の名医が語る「薬」と「延命」
激ヤセのイメージがあるがんだが、その原因は2つある。1つは「がん悪液質」のためだ。
「悪液質とは栄養不良により体が衰弱した状態を指す言葉です。心不全、慢性肺疾患などでもみられ、がん患者の60~80%、がん死の20~25%を占めるといわれています」
もう1つの原因が「抗がん剤」だという。「がんを小さくして長生きしたいから」というがん患者は多いが、ときにそれは命を縮めることにもなるという。
「抗がん剤を使えばがんは小さくはなりますが、それが長生きにつながるとは限りません。がん(悪性腫瘍)と良性腫瘍の違いは、『増殖速度』です。初期のがんなら、抗がん剤で腫瘍を縮小させ、手術でがんを完全に消失させられるかもしれません。伊東さんのように全身転移している患者さんでも抗がん剤でがんを縮小したり、がんの進行度合いを示すがんマーカーの値も下げられます。しかし、それは一時的で、全身に転移するぐらいのスピードで増殖中のがんを抑える抗がん剤はそれだけ正常組織への悪影響も強いのです」
伊東さんのように副作用があまりにも強く、食事を取るのがままならない状態での抗がん剤の継続が延命につながるとは限らないのだと言う。