【サル痘】天然痘ワクチンが有効なのは「交差免疫」のおかげ
今年に入って感染者がじわじわと増えているサル痘に対し、現時点では日本で一般的に広く使える治療薬はないと前回お話ししました。
では、ワクチンはどうでしょうか。国内でも素早く使えそうなものとしては、天然痘ワクチン(痘そうワクチン)が考えられます。天然痘ワクチンは1983年から国内製造がストップしていましたが、バイオテロへの懸念から製造が再開され、国内でも備蓄されています(乾燥細胞培養痘そうワクチン)。
アメリカ疾病対策センター(CDC)によると、サル痘予防にも少なくとも85%有効であることが示されています。サル痘ウイルス暴露後4日以内に痘そうワクチンを接種すると感染予防の効果が、暴露後4~14日で接種した場合は重症化予防の効果があるとされています。
サル痘なのになぜ天然痘ワクチン? と思う人もいらっしゃるでしょう。その理由は、近代免疫学の父ともいわれているエドワード・ジェンナーの牛痘接種法の発見の経緯と似通っています。ジェンナーは「乳搾りなどをして牛と接することによって自然に牛痘にかかった人は、その後、天然痘にかからない」という農民の言い伝えから、天然痘よりはるかに死亡率の低い牛痘を接種することによる天然痘の予防法を開発しました。ちなみに、接種に使われていたウイルスは牛痘ウイルスではなかったことが後に判明し、そのウイルスは“ワクチン”に由来してワクシニアウイルスと呼ばれています。