中川恵一
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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

扇千景さんが他界 食道胃接合部がんはピロリ除菌とメタボで増加

公開日: 更新日:

 ピロリ菌感染がなく、胃が正常になると、胃酸の分泌が増えます。これとは別に日本でもメタボ化が進み、肥満気味の人が増加したため、腹圧上昇による胃酸逆流も起こしやすくなっているのです。

 これらが重なって、胃酸の逆流が続くと、食道胃接合部の粘膜に断続的な炎症が発生。それが発がんの原因です。米国ではこのがんの増加が急ピッチで、1975年から20年間で6倍以上に。日本でも今後、胃がんが減って、食道胃接合部がんが増えるのは間違いないでしょう。

 食道の粘膜は扁平上皮で扁平上皮がんに、胃の粘膜は円柱上皮で腺がんになります。この部分にできたがんの組織を調べて、扁平上皮がんなら食道がんとして治療、腺がんなら胃がんとして治療しますが、食道側に腺がんがあることも珍しくなく、悪性度の見極めも難しいことがあります。

 ですから治療法がはっきりとは定まっていませんが、たとえば手術と判断されると、胃の上部と食道の下部を切除すれば十分で、胃がんで胃を全摘するほどの大がかりではありません。術式も、食道がんでは、右胸部と頚部、上腹部を開きますが、前述の手術なら開腹のみで、相対的に体の負担が少ない。

 抗がん剤を使うケースでは、扁平上皮がんなら食道がんの治療に準じて5-FUとシスプラチンを、腺がんなら胃がん治療に準じてTS-1とシスプラチンを使います。

 扇さんのご冥福をお祈りします。

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