名郷直樹
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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

マスク着用に関する「個別」の考えと「一般的」な考え

公開日: 更新日:

■本当は着用した方がいいと思ってる?

 考えることですら「個人的」には遠慮がある。そうだとすれば「行動」のレベルでは、さらに「個人的」が困難になる。これは同調というより、抑圧といった方がいいのかもしれない。

 何を考えているかは、言わなければ他人にはわからない。しかし、行動は周囲に見えてしまう。個人的な考えより、個人的な行動にはさらに抑制がかかる。

 と、ここまで書いて、今自分が書いていることも、一般的なことに過ぎないと気づく。同じ言葉で考えれば、同じような考えが出てくる。だからこそ話が通じるわけで、これはじつは日本語の問題に過ぎないのではないか、とそんな考えが浮かんでくる。

 英語で「I think」というフレーズに対応する日本語があるかというと、ないような気がする。「私は~と考える」というような語り口は、日常の中ではほとんど聞いたことがない。

 そんな中で最近よく耳にするのが「~と思っていて」というフレーズだ。ここの主語は「私」であるが、「私は」は省略され、「思う」という部分が「思っていて」と、「思う」と言い切らずなんだかはぐらかされる。このストレートではない「思っていて」という表現は、日本語における「個人」というものをなんだか象徴している感じがする。

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