認知症の本人が「食べたい」と何度も訴えたら食事を与えてもいいのか
「食べたい」と言われたら、家族は「もう食べたでしょ」と否定せず、本人の気をそらしてください。「今から準備するから待っててね」と声掛けをしたり、音楽をかけて聞いてもらっているうちに、本人は食べたいという意識を忘れてしまうケースが多いです。「食事した」という記憶をできるだけ長く残すために、食事が済んでも食器をすぐには片付けず、そのままの状態で置いておくのもひとつの手です。
それでも何度も「食べたい」と訴えられて困ったら、1回の食事量を減らして食事の回数を増やしたり、おやつなどの間食を渡すといいでしょう。ただし、食べ過ぎると消化が追いつかず吐いてしまう場合もあるので、量には注意してください。
ただし、健康面を考慮すると、やはり食べ過ぎは良くありません。過食で体重が増加し膝を痛めてしまうと、動かなくなり寝たきりになる危険性があります。また、糖尿病を併発している人が過食すると、血糖をコントロールできず高血糖になり、動脈硬化などの合併症のリスクも高まります。
過食による肥満や高血糖を防ぐためにも、家族には、1日30分、一緒に散歩するよう指導を行っています。散歩が難しい場合は、家の中で椅子に座ったまま足を上げる運動を、本人ができる限りの回数で行うのも有効です。
▽森川髙司(もりかわ・たかし) 奈良県立医科大学卒業、奈良県立医科大学付属病院で臨床研修医(第2内科)。その後、吉野病院、田北病院内科医長、向山病院副院長などを経て、兵庫県尼崎市に医療法人煌仁会 森川内科クリニックを設立。現在、産業医や校医も務める。