「尿」は心臓病の診断・治療の大切なバロメーターになる
また、心臓手術を実施する前には、必ず尿検査を行います。腎臓の状態を確認するのが目的です。とりわけ、ネフローゼ症候群でないかどうかに注意を払います。尿にタンパクがたくさん出てしまうことで血液中のタンパクが減り、低タンパク血症から低アルブミン血症や浮腫が現れる腎臓の病態です。
低アルブミン血症があると、手術時に生じる傷がくっつきにくくなり、合併症のリスクが増大します。そのため、術前の尿検査で尿中にタンパクが大量に出ている患者さんは、いったん手術を見合わせたり、まずは腎臓内科で治療して腎臓の状態を安定させてから手術を実施する手順を踏みます。心臓手術においても、尿検査が大きな判断材料になっているのです。
尿中にたくさんの糖分が確認できた場合では、2つのパターンが考えられます。ひとつは糖尿病があってきちんと血糖をコントロールできていないパターンで、こうした患者さんは手術による合併症のリスクが高いため、まず入院して血糖値を安定させてから手術を行うという手順を踏むケースが多くあります。
もうひとつが糖尿病の治療のためにSGLT2阻害薬を使っているパターンです。SGLT2阻害薬は血中の糖分を尿に排出する作用があり、服用中の患者さんは尿糖の数値が跳ね上がります。ただ、薬で血糖をきちんと管理できているわけですから、手術によるリスクがアップするわけではありません。