苦しむわが子を理解し、寄り添うにはどうすべきか?
もちろん、運良く熱心で相性も合う主治医と出会え、また就労支援も含めたデイケアなど社会的治療にもつながることも可能で、本人にそこに通うというモチベーションがあるならば、大いに力強い助けとなることでしょう。一方で、その多くはそもそもそういったモチベーションすら欠けており、本人が足を運ばないからといって家族が医療機関や保健所などの行政機関に相談しても、これまた運良く担当してくれる方が親切ならば親身に対応してもらえることもありますが、「精神疾患じゃない」「本人が来なければ何もできない」などと、事実上の門前払いを受けることも現実には少なくないようです。
心理カウンセリングは、ひきこもりだけでは自費で健康保険が効かず、またひきこもりに効果のある医科学的に確立した治療などはまだ存在しません。草の根ではそういった問題にも対応できる優れた凄腕のセラピストは存在するとは思うのですが、公的制度としては確立していないため、当たり外れも大きいというのが現実かもしれません。(つづく)
▽最上悠(もがみ・ゆう) 精神科医、医学博士。うつ、不安、依存症などに多くの臨床経験を持つ。英国NHS家族療法の日本初の公認指導者資格取得者で、PTSDから高血圧にまで実証される「感情日記」提唱者として知られる。著書に「8050親の『傾聴』が子供を救う」(マキノ出版)「日記を書くと血圧が下がる 体と心が健康になる『感情日記』のつけ方」(CCCメディアハウス)などがある。