「記憶」は想像以上に曖昧…容易に真実と塗り替えられる
また、アメリカの認知心理学者であるエリザベス・ロフタスは、長年、変わってしまう偽りの記憶(虚偽記憶)の生成について研究しています。一例を挙げて説明します。
まず被験者に、交差点に進入した自動車が別の自動車に接触し、玉突き事故を起こしてしまった映像を見せます。その後、「車Aは一時停止標識を通り過ぎたとき、どれくらいの速さで走っていましたか?」と質問しました。
実は、映像には一時停止標識はなかったのですが、意図的に質問内容に入れることで、被験者の反応を調べたのです。興味深いことに、「一時停止標識は見ましたか」と被験者に尋ねると、なんと半分以上の人が見ているはずがない一時停止標識を「見た」と答えた。まさに、虚偽記憶を生成したというわけです。
私たちの記憶は、思っている以上に曖昧です。かつて、故・志村けんさんが「亡くなった」というウワサが流れたことがありました。海外でも似たケースがあり、1994年から1999年まで南アフリカ共和国の大統領を務め、2013年に95歳で死去したネルソン・マンデラさんが、「1980年代に獄中死した」という誤った記憶を多くの人が持っていたという事実もあるほどです。こうした単なる記憶違いではなく、多数の人が共通した虚偽の記憶を持つ現象を「マンデラ効果」と呼ぶのですが、インターネットスラングとしてこの言葉は拡散された背景を持ちます。