20年間ひきこもりの60代男性「自宅にだれかを入れるのは怖い」
ご本人が孤独の中で暗中模索して訪問診療という答えにようやくたどり着き、がんばって声を振り絞って問い合わせをいただけるまでになったという雰囲気が伝わってくるかと思います。
「車の中でもいいですか? お時間は当日電話で教えてくださるんですよね?」
「ケースワーカーの〇〇さんとは連携をとってくださっているんですよね? 私は普段家族かその人としか話をしないものでして」
訪問診療を重ねるうちに、それなりの信頼関係が構築され、遠慮なく胸の内を明かしていただけるようになりました。すると電話を通じてご本人の口から、不安や診療に関する疑問や確認したいことについてなど、繊細な質問や問いかけが増えていきました。
「コロナが怖いので、皆さんには失礼かもしれませんが、万全な対策をとってほしいです」
最近またはやりつつある、コロナやかぜの症状について心配しているという旨の連絡があった時は、「ご安心ください、私たちはほかの患者さんもご病気をお持ちで、コロナにかかると重症化しやすい方が多いので、感染対策については細心の注意を払って診察に伺うことをお約束します」となるべく患者さんの目線に合わせ、安心していただけるようにお声がけさせていただくのでした。
最近は精神科の在宅医療も需要が増えつつあります。患者さん一人一人のお気持ちに寄り添い訪問するといった在宅医療のあり方は、心のケアを必要とされている患者さんにとても合っているのではないかと考えています。 (火曜掲載)