突然母が別人になった(3)9カ月ぶりに会った母は記憶とはまったく違っていた

公開日: 更新日:

 古くから地域にある精神科病院に「いますぐ連れていって私を閉じ込めてほしい」という母の切羽詰まった電話に異変を感じ、私は慌てて故郷への飛行機を予約した。

 翌日、2匹の猫たちの餌をたっぷりとボウルに入れ、誰ひとり告げることなく羽田空港へと急いだ。2020年7月の出発ロビーは、これまでに見たこともないほど閑散としていた。「東京の人間は決して他県に行くべからず」という圧力がとても強かった時期だ。

 空港からバスに乗り、9カ月ぶりに実家に到着すると、そこにいたのは私の記憶とはまったく違う母の姿だった。痩せこけて目が落ちくぼみ、あたりをうかがうようなおびえた顔つきをした、小刻みに震える老女だったのだ。

 母は農家に生まれ、幼い頃からずっと重労働をしていたと聞いていた。「おかげで足腰が丈夫に育ったし、腰も曲がらなかった」と、当時の苦労を笑い飛ばして、元気に暮らしていたはずだった。

 父親に聞くと、年明けから食欲がなく、このところほとんど何も食べたり飲んだりしていないようだったという。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    テレビでは流れないが…埼玉県八潮市陥没事故 74歳ドライバーの日常と素顔と家庭

  2. 2

    ロッテ吉井監督が佐々木朗希、ローテ再編構想を語る「今となっては彼に思うところはないけども…」

  3. 3

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 4

    人事局付に異動して2週間…中居正広問題の“キーマン”フジテレビ元編成幹部A氏は今どこで何を?

  5. 5

    【埼玉・八潮市道路陥没「2次被害」現場ルポ】発生2週間、水は濁り死んだ魚が…下水放流地で見た河川の異変

  1. 6

    TV復帰がなくなった松本人志 “出演休止中”番組の運命は…終了しそうなのは3つか?

  2. 7

    "日枝案件"木村拓哉主演「教場 劇場版」どうなる? 演者もロケ地も難航中でも"鶴の一声"でGo!

  3. 8

    中居正広氏&フジテレビ問題で残された疑問…文春記事に登場する「別の男性タレント」は誰なのか?

  4. 9

    20代女子の「ホテル暮らし」1年間の支出報告…賃貸の家賃と比較してどうなった?

  5. 10

    ビートたけし「俺なんか悪いことばっかりしたけど…」 松本人志&中居正広に語っていた自身の“引き際”