「猫狩り族の長」麻枝准著
じっちゃんの代わりに自殺の名所、塔神坊で自殺監視の仕事をしている女子大生・時椿は、独りで歩いている女性に気づいた。遊んでいた野良猫たちがものすごい速さで逃げ去っていく。切り立った崖の、あと数歩で海に落ちるというところで、女性に声をかけた。
「死んでは駄目です」
端正な顔をした女性は「そもそもお前は何者だ。その若さで私を説得するに足る人間なのか?」と威圧的に答え、「私は世界の外側を知りに行きたいんだ」と言った。それは「死んだ後に待つ世界」だと。
彼女は十郎丸と名乗り、作曲家だと言った。それは時椿がいつも監視小屋で聴いている音楽の作者だった。
50年の時を超えて巡り合う、2人の女性の物語。
(講談社 1870円)